--------(--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2011-06-15(Wed)

陽炎

えっと、いろいろとありました(汗
転勤で引っ越したりとか。
とりあえず、再開したいと思います。

ブログに足を運んで下さった方には申し訳ありませんでした(ぺこり)

現在、10月の角川スニーカーへの応募作品を書いています。
傍らで思いついた短編を書き溜めていっているので、それらを今後載せていきたいと思います。
作品は追記の方へ載せています。

最後に、3月の東関東大震災で被害に遭われた皆様の、一日も早い復興を祈っています。
知り合いも何人もいて、幸いにも皆無事でしたが、まだまだ大変な日々が続いているようで心配です。

では、失礼します。
「陽炎」

 ゆらゆらと淡く立ち込める陽炎。
 僕はその中をゆっくりと歩いて行く。
 燦燦と降り注ぐ太陽の光が感覚を奪う。

 さて、今日は何をしようか。
 そう思い立って考えながら歩いていたはずなのだが、暑さに朦朧とし、つい意識を手放してしまいそうになる。

「はぁ、はぁ」

 自然と上がってくる息に合わせ、僕は足を速めていく。理由は特にない。強いて言えば、この暑さから早く逃れたかったといったところか。しばらく走り、息が上がりきったところで足を止める。暑さはより一層僕の意識を遮断していく。走ったところで、逃げたところで、この暑さからは逃れられない。
 ふと立ち止まった場所を見やる。そこは神社へ続く階段の入り口。はるか昔、子どものときによく遊びに言った記憶がある。大人になって、久しく足を運ぶことのなかった場所。何故こんなところまで来たのか、何か予感めいたものがあったわけでもなく、ただの気まぐれである。
 でも、この気まぐれに身を任せるのもいいかと思ったのは、ただ、暑さに頭がぼんやりとしていたからだろう。上方に見える神社を目指し、僕は足を進める。
 陽炎はより一層僕の視界を歪めていく。暑さは一層と僕の感覚を奪っていく。階段を上りきるころには、ただ自動的に動く人形のようになっていた。視界の先に神社が映ってくる。ああ、懐かしい。どこも変わらない昔と寸分違わない姿で僕を迎えてくれる。歪んだ視界の中でその姿だけが鮮明に映し出される。
 何かに導かれるように僕はその神社へと近づいていく。その頃には頭は何故か明瞭になっていた。ただ、周りの景色はゆらゆらと陽炎のように揺れていた。
 辿り着くと目の前には賽銭箱。何となく厳かな気分になった僕は、財布を取り出す。そこから硬貨を手に取り、賽銭箱へと放り投げる。そして手を合わす。しっかりと二礼二拍手一礼。願い事なんてするわけもなく、単純な儀式としてのお祈り。だって、神様なんていないんだから。いたら、いてくれたなら、そんな想いは陽炎のようにゆらゆらと揺れ心の中から霧散する。

「あら、お参りかしら? こんなところまで珍しいですね」

お祈りを終え、ぼんやりとしているところに声を掛けられる。声のする方を振り向くと、そこには一人の巫女装束の女性が立っていた。年齢は僕とほぼ同じくらいか。背に届こうかという黒髪が、この神社という雰囲気と相まって何だか神秘的な雰囲気を醸し出している。

「こんにちは」

挨拶をする。

「こんにちは、お参り?」

彼女は挨拶と共にそう僕に訊いてくる。ええ、と僕は答える。まあ、巫女さん相手に、祈りごとなんてないですけどねとは言えない。

「ふふ、そう、ありがとう。 ここに人が来るのも久しぶりね。 うれしいわ」

手を口にあて、くすくすと笑う彼女。少しの間笑った後、でもね、と付け加えるように言い添える。

「こんなところでお参りしたって、願い事なんて叶わないわよ」

笑顔はそのままに、そんな神社の巫女にあるまじき言葉を発してきた。え?と思わず聞き返す僕をおもしろそうに眺めながら、彼女は言葉を紡ぐ。

「そう、叶わないの。 だって、神様なんていないんだから」

すっと一陣の風が吹き、その言の葉を僕の耳まで運んでくる。それは、奇しくも先ほど僕が思っていたのと同じ内容。けれど、言う人間が違えば、ここまで重さが違ってくるものか。

「そんなこと言っていいの? だって君は」

「巫女なんだから? 関係ないわ、そんなの。 叶わないし叶えられない。神様なんていない。 いたら、いてくれたなら……」

そこで彼女は言葉を切る。僕の方をじっと見つめ目を細める。その姿に少しだけ昔の誰かを思い出した気がした。あの日もこんな暑苦しくて朦朧とするような日だった。

「ね、※※君」

 彼女に名前を呼ばれたような気がしたが、その言葉は僕には何故か届かなかった。その瞬間だけ、声がぼんやりと遠くなった感覚。

「あの日も、こんな暑い日だった。私たちはここで大切なお願いをした。 でも、それは叶わなかった。 無情にもその日の内に破れることになってしまった」

 彼女の言葉が遠い。頭の中にすんなりと入ってこない。だけど、大切なことのような気がする。僕の瞳には彼女が映っている。けれど、頭の中にはあの日の、あの別れの日の映像が流れてくる。
 
「だからね、私は神様を信じない。 でも、もしいるなら今この時は感謝してもいいかなって。 だって、貴方とこうしてまたお話できるんだから」

 そう言って彼女は僕の方へと近づいてくる。背まで届く黒髪が懐かしい。その笑顔が愛おしい。ああ、だって、彼女は、いや君は僕の最後の願い事の人だから。
 僕の目の前まで来て、彼女は僕をぎゅっと抱きしめる。僕も彼女を抱きしめ返す。それは、本当に懐かしい感覚。今まで思い出さずにいた今は遠く色褪せてしまった想い出。あの日から愛おしさは苦しさに変わっていた。だから、僕はその感覚を殺した。でも、今は鮮明に思い出せる。
 暫くの後、彼女はすっと僕から離れ、

「ふふ、時間みたいね。 よくわからないけど、これ以上はいられないみたい。」

名残惜しそうに一目僕の方をじっと見つめ、彼女は踵を返す。僕はとっさに彼女の名前を叫んでいた。彼女は手を頭上に上げ、左右に振る。それはいつも彼女がしていた別れの挨拶。それに対して、僕はいつもまたね、と返していた。でも今日は、

「さよなら」
それは本当の別れの挨拶。次に会うことはもうないと感じているからこそ出てきた言葉。その言の葉に僕は最大限の愛しさと感謝の念を込め叫んだ。彼女は陽炎に包まれるようにぼんやりと消えていった。
 後に残ったのは、寂れた神社と、明瞭になって景色だけ。燦燦と降り注ぐ太陽が僕を現実へと引き戻していく。
 あの邂逅が何だったのかはわからない。けれど、ひと時の出来事が胸の奥に暖かなものを思い出させてくれた。
 ふと、彼女が言った言葉を思い出す。ああ、そうだ、僕もだよ、と今はいない彼女に心の中でそう伝える。
 神様なんて信じない。けれど、もしいるならば、今この時だけは感謝したい。だって、君とまた出会うことが出来たんだから。

FIN





思いついたものをつらつらと書いた感じです。
思いの外纏まった作品になったかなと思います。
読んでくださった方、ありがとうございました。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

コメント

更新、更新♪

こんばんはです~、CXF19です。
白黒さんが、ブログを更新したと聞きつけて、飛んで参りました!

某場所では、定期的に会っていますが、こちらではお久しぶりです。

これからも更新続けて下さいね☆
それでは失礼致します。

至りましたねw

ブログ更新お疲れ様です!
チャットで事実を知った時は釣り以外の何物にも思えませんでしたがwwまさか本当に更新されていたとは……生きててよかった(ぇ)これからも頑張ってくださいねー♪
カレンダー
04 | 2018/05 | 06
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
リンク
ブロとも一覧

扉の中の部品たち

無色の翼、鳥は何処に向かうのか?
検索フォーム

FC2Ad

Powered by FC2 Blog

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。